登山の世界がよーくわかる-常識とあれこれ-
YAMA BOOKS18 山登りでも始めてみようか-登山の世界がよーくわかる-
発行/株式会社 山と渓谷社
文/岩崎元郎 絵/中尾雄吉 より引用
山登りがトレンディ登山靴のイラスト
山マークルールがないから無理がない
 登山はスポーツなのか、そうでないのかをここで議論するつもりはありません。早い話、そんなことはどっちだっていいじゃん、と思ってます。ただ、ぼくの考えはというと、「山は般若心経の世界」、スポーツというより旅だな、なんて思ってます。
山登りイラスト04
 1970年代に活躍した登山家の一人、畏友・遠藤甲太氏は、ぼくに「哲学はだめなんだよ」と教えてくれました。「学しちゃだめ、哲しなくちゃ」と言うのです。ぼくはそのとき目からウロコが落ちたような思いがしましたね。そうか、山に登るってことは、哲することなんだ―。

 さて、百歩譲って登山が健全な大衆スポーツであるとしても、競技ではないはずです。昨今、スポーツクライミングと称して、困難な岩場をいかに早く登るか、どこまで高く登れるか、という競技がめにつきますが、登る対象が人口壁主流となった現在、それが登山でないことは自明でしょう。

 まして笑止なのが国体登山っていうやつ。競技というのはルールが確立していなければ成立しないとおもうのですが、ルールがないところにおもしろさがあり、無理なく楽しめる山登りだっていうのに、無理やりルール化しちゃうんだから、そのルールに無理があったって無理からぬ話というものです。

 国体登山に比べたら、スポーツクライミングのコンペはずっとましだし、鍋割山荘の草野延孝さんが中心になって毎年6月に開催されている丹沢ボッカ駅伝のほうが、ルールが明解で競技スポーツとして成立していると思います。国体登山の予算を、中高年の安全登山教育にふり向けてほしいと希っているのは、ぼくひとりではないはずです。

 早く登る必要もない、他人と競うものでもない。大きな山、小さな山、急崖のある山、たおやかな山、どんな山とどんなふうに関わるか、それは自分で決めればいいことなのです。

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