今年はどんな山に登ることを考えていらっしゃいますか?

ぼくは須賀敦子さんの文章が大好きです。
10年以上も前、小説現代に山のエッセイを連載するに際して担当者がお手本として渡してくれたのが、「ミラノ霧の風景」でした。品があって、意志があって、爽やかで、読み易い素敵な文章に、自分の文章は敵いっこない、とがっかりしたことを覚えています。

続けて読んだのが、「トリエステの坂道」。しみじみと良かった。
久しぶりに最近読んだのが、「ヴェネツィアの宿」。須賀さんの文章を読んでいると、彼女の抱えている切なさが読み手に伝わってきて、こちらの胸にシコリのように残っているせつなさを、温かく溶かしてくれます。
「ヴェネツィアの宿」の中に、「カティアが歩いた道」という章があります。そこには、次のような言葉がありました。
「ドイツ人は、歩くのが好きなのよ、と彼女は得意気だった。 それにしても、たんすの上のカティアの歩き靴(大きな編み上げ靴)に、私があるまぶしさのようなものを覚えたのは、それが、歩くことを通して子供たちに土地のつながりの感覚をおぼえさせるという、ヨーロッパの人間が何世紀にもわたって大事にしてきた、文化の伝統の一端をまざまざと象徴しているように思えたからだった」

ぼくが、この文章を読んで感じたことは、大人も子供もなく、人間にとって大切なことは大地の上にしっかり立つこと、そして歩き出すこと、ということでした。
自分と向かい合うことのできる、素敵な時間が持てること、間違いありません。

               ぼくと一緒に、山を歩いてみませんか?


ベルグ・ハイル!
                                   
                                        

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